ニワトリと交際するために、ブタはあんなに大好きだった卵を断っていました。

しかし、それは決して楽なことではありません。


壁中に卵の絵を飾り、袖ボタンまでゆで卵のデザインだった卵好きのブタは、実は最初の出会いから卵を食べていませんでした。

隠れて食べていればいいのに、中々律儀な男です。

ブタは卵の幻覚が見えてしまうほど、卵に飢えていました。

それでもブタはカノジョのために、煩悩を振り払おうとします。


確かにこの花、卵に見えないこともありませんね（笑）

ブタは、カノジョと一緒に映画を観るも、どうしても卵のことが頭から離れません。

それでもブタは、必死に卵のことを振り払おうとします。


こんなに露骨につらそうな顔をしているのに、全く気にしないニワトリ。

「鶏は三歩歩けば忘れる」という言葉通り、賢そうに見えてトリ頭なのかも知れません（笑）

スクリーンに映る俳優まで卵に見えてしまうブタ。


卵に見えてしまうなんて、よっぽど丸々とした役者だったのでしょう。

ちなみに卵を水に浮かべた場合、沈んだら食べられる、浮いたらアウトという見極め方があります。

もし彼らが腐っていたら、船が沈没しても助かります。
めでたし、めでたし。

ブタは愛するカノジョも、そして周囲の人たちも、卵に見えてしまいました。

ブタの心は、限界になっています。


まぁ、カノジョは毎日新鮮な卵を産んでくれるかもしれませんからね。あながちこのイメージは間違っていないかもしれません。

というか、このニワトリは卵を産まないのでしょうか？

映画館での光景は夢でした。

しかし限界であることは変わらず、ブタは遂に我慢ができなくなりました。


この足の長いニワトリにとって、このベットは小さいです。

車である場所に向かうブタ。

街のネオンさえも卵に見える中、彼が向かった場所は、毎日卵料理を食べていたあの店でした。


幻覚が見える状態で、絶対に運転してはいけません。

今まで断っていた反動で、ブタは大量の目玉焼きを注文しました。

その匂いは、ブタが長い間待ち望んでいたものでした。


相変わらずとんでもなくふっくらした目玉焼きです。
しかもプルプルと揺れているところを見ると、あまり火は通っていない様子。

それなのに殻に入っているかのように膨らんでいます。

ブタは、待ちに待った卵を口に運びました。

しかし、口に入れる直前に動きを止めます。

ブタの目は、右のあるものに留まりました。

目に留まったのは、初めてカノジョに会ったときに贈った花。

手に取ったのは、カノジョと2人で撮影した写真。

目の前の卵を食べることは、カノジョを裏切ることになることを、ブタは知っています。


彼女と生きるために好物を我慢しなければいけないのか。
自分を騙し、彼女に隠して生きていくことが、本当に幸せなのか。

大げさなように思えますが、真剣に考えてみると難しいものです。

大好きな卵を食べるか、大好きなカノジョと生きるか。

ブタはついに決断します。

ニワトリが目覚めると、隣にいるはずのブタがいません。

その誰もいない場所に触れると、カレの温もりすら感じません。

ブタは卵を食べませんでした。

そして、カノジョと笑って生きていく道を選びました。

その手には、ブタが初めて用意したトウモロコシを持って。



恋人のためにここまですることは本当に正しいのかわかりません。

しかし、恋人が宗教上の理由で食べないのなら、一緒に生きるためには合わせないといけません。

もしこの卵がタバコやお酒、あるいは覚醒剤（幻覚が見えていたので）であった場合は、また違った印象を与えるでしょう。

ギャンブルかもしれないですし、浮気相手の場合もあります。

この“卵”をさまざまなものに置換えた場合、色々と考えさせてくれる作品です。